
アイリス
メイン春
アイリスは、一輪のなかに二つの方向を併せもつ春の花です。三枚の花びらが上に立ち、もう三枚が下へやわらかく垂れます。立ち上がる花びらを旗弁、垂れる花びらを垂弁と呼ぶこともあり、この独特の造りのおかげで遠くからでも一目でそれとわかります。名はギリシャ神話の虹の女神イリスに由来し、その名のとおりアイリスの仲間には紫・青・黄・白と、虹を写し取ったような多彩な色が集まっています。アヤメ科の多年草で、春が深まるころ水辺や庭先にすがすがしく咲き上がり、まっすぐな茎の先に大きな花をひとつずつ掲げて、端正でありながら華やかな印象を与えます。ヨーロッパではフランス王家の紋章フルール・ド・リスがこの花をかたどったと伝えられ、画家ゴッホが好んで描いた花としても長く愛されてきました。
花言葉の物語
紫のアイリスの花言葉は「良い知らせ」です。この意味は、名の主である女神イリスからそのまま受け継がれてきました。イリスは神々の意を人に伝える使者で、天と地をつなぐ虹を橋として行き来し、知らせを運ぶ存在でした。ですからアイリスは、虹がそうであるように、雨上がりに訪れるうれしい便り、すなわち良い知らせを象徴する花として読まれてきたのです。虹が神々の世界と人の世をつなぐ通り道であっただけに、この花には遠くの想いを届ける使者の面影もともに宿っています。数ある色のなかでも紫のアイリスがとりわけこの花言葉を代表し、春に先んじて咲き、季節が移ったことを告げる姿とも自然に重なります。うれしい便りを待つ場所にこの花を置けば、虹を渡ってきた女神の言伝てのように、良い知らせが届くことを願う心もともに込められるのです。
色ごとの花言葉
- 紫のアイリス良い知らせ
贈りたい瞬間
アイリスは、待ち望んだ良い知らせを祝う場にこそよく似合う花です。「良い知らせ」という花言葉のとおり、合格や就職・昇進といったうれしい結果をともに喜びたいときに贈れば、その意味がそっと生きてきます。新たな出発を控えた人へ、前途に吉報が続くことを祈る応援の贈り物としてもふさわしく、卒業や引っ越し・開店を祝う春の花束によく映えます。虹の女神から名を受けた花だけに、雨のあとに心が晴れることを願う慰めの場にも合い、つらい時を過ごす人へ、うれしい知らせが訪れますようにという挨拶として届けられます。フランス文化を好む人や、ゴッホの絵を愛する人にとっては、語らいの種を秘めた心のこもった贈り物になります。春の気配をそのまま届けたいときには、すがすがしく咲いたアイリスの一束が、季節のときめきまで一緒に運んでくれるでしょう。
組み合わせのコツ
紫のアイリスは花束の中心をになう主役の花ですから、そばにはその涼やかな紫を支えるクールトーンの素材を置くとよいでしょう。ブルーヒヤシンスやデルフィニウムのような青い春の花と類似色でまとめれば、澄んだ春のクールトーンの花束が仕上がり、近い温度の色どうしが溶け合って、落ち着きのなかに奥行きのある表情が生まれます。反対にくっきりとした見せ場をつくりたいなら、黄色いフリージアやチューリップをほんの少しだけ添えてみてください。紫と黄は補色の関係で、わずかでもアイリスの紫がいっそう鮮やかに引き立ちます。白いかすみ草やスターチスのような穏やかなフィラーを花のあいだに差し込むと、大ぶりの花のあいだに余白が生まれて編みが整い、緑は葉の長く伸びるグリーンで受ければ、まっすぐな茎の線が生きて春の庭のみずみずしさがにじみます。多くの色を欲張るよりも、紫を中心に一つ二つの色だけを添えて、アイリスならではの涼やかな趣を生かすことが、花束を清らかに保つ道です。